ALICE in the WONDERLAND バックナンバー
19991001 < ニライカナイ 遥かなる根の国 1 >
著者:岡田芽武 発売元:講談社 ISBN:4-06-334242-5 価格:\714-.
岡田芽武と言えば「影技-SHADOW SKILL-」で有名だが、相変わらず見づらい
また、今回は例の如きすさまじい当て字もさる事ながら、本文中のアチコチに琉球語の文があり、それが読むのに重要な位置を占めているため、和訳が付いているとはいえかなり気合がいります
さらに、プロローグ部分の北谷王子(チャタンオウジ)と神人(カミンチュ)の闘いの部分は完全琉球語で字幕スーパー付きです ^^;
話の構成自体はおおまかに言って探偵依頼モノから例の如く超人対決モノへと向って行きますし、今回も主人公3人のうち、探偵業をやっていて、依頼を引き受ける2人は超人的...というか皇言霊(すめらぎ ほつま)(北谷王子?)は完全に人間を超えてます
ただし、シャドウスキルのように格闘能力が高いわけでは無いですが、「音使い」として活躍します
格闘部分に関しては皇言霊の相棒である柊乱空(ひいらぎ らんくう)(女性です)が伊勢神宮に秘して伝わる「殺法」の使い手として活躍しますが、いかんせん神の力?を持つ神人に対しては力不足です
ただ、やはりヤマ場を心得ているというか、ヤマの部分に関しての盛り上げは流石です
カッコイイですね(笑)
画風は、余計に目が大きく平目に近くなってきました ^^;
とりあえずファンなら買い、そうでない方は帯のロゴ「神に闘いを挑む」か、表紙の絵に何か感じるものがあったら買いです
19991001 < ガサラキⅠ戦術甲冑( タクティカルアーマー ) >
著者:野崎 透 発売元:角川文庫 ISBN:4-04-420001-7 価格:\540-.
< ガサラキⅡ傀儡子( くぐつ ) >
著者:野崎 透 発売元:角川文庫 ISBN:4-04-420002-5 価格:\600-.
< ガサラキⅢ接触( ふれあい ) >
著者:野崎 透 発売元:角川文庫 ISBN:4-04-420003-3 価格:\640-.
< ガサラキⅣ未来( あした ) >
著者:野崎 透 発売元:角川文庫 ISBN:4-04-420004-1 価格:\590-.
マルチメディア展開しているガサラキ-餓沙羅鬼-の小説版
基本的にTVで展開された現代編(近未来編)を追って展開されているが、細かい部分での差異がいくつかある
もっともそれはより深くストーリーを展開するためであり、アニメ版で説明が不足していた背景説明や、ガサラキの千年以上にわたる物語をよりわかり易い形で提供するためのもので、良い方向に変更が加えられている
現在、連載中のコミック版よりもわかり易く、メカニカルな部分においても、人間的な部分においてもハッキリ言って面白い
また、Ⅳ未来において、二人のユウシロウの関係やガサラキとは何なのかが展開されている
ただし、Ⅱ傀儡子のように唐突に時代が過去に戻っての話になったりして、ある程度の予備知識がないととまどうかもしれないが、Ⅱ傀儡子(平安編、あるいはそれ以前)のみは独立した話としても読める
メカファンにとってはⅠ戦術甲冑とⅢ接触におけるTAの活躍やメカニカルな解説が目を引く
実際に開発途上兵器として存在したらどうなのか...という点から書かれているというのが、今までに数多くあったメカ(兵器)モノとは少々趣を異にしていて、その運用面にまで話として触れられているのがナカナカ
登場人物としては主人公、ヒロイン、その他多数の登場人物たちは割りと感情の起伏が少ないのが特徴と言える
とは言え、ロボットのようかと言えばそうではなく、押し殺した感情というのが滲み出ていると表現できる
またその分、登場人物の感情が出る部分についてはより情感的に感じられる
全体的にはガサラキ関連としては一番オススメできるかな
舞台設定も少しずつ無理の無いように変えてあるし、話全体の流れとしても比較的掴みやすいように工夫してあるのでアニメ版でうまく話が判らなかった人でも大丈夫
19990603 < グッドラック 戦闘妖精・雪風 >
著者:神林長平 発売元:早川書房 ISBN:4-15-208223-2 C0093 価格:\1,800-.
我は、我である
この序文で始まるこの本は、15年前に刊行された[戦闘妖精・雪風](ISBN4-15-030183-2 C0193 ハヤカワJA文庫)の続編で、ようやく刊行されたという感である。
前作からのおおまかなストーリーを追えばこう説明ができる...
ある日、南極大陸に突如出現した超空間ゲート。その向こう側にはフェアリィと呼ばれる惑星と、ジャムと呼ばれる正体不明の敵性体が存在した。
人類はジャムの地球侵攻に対抗すべく、惑星フェアリィに基地を建設し、航空戦力を投入した。FAFと呼ばれる軍は、当初、人類の中のエリートが参加していたが、次々と消耗していく人的損害に対し、各国政府は世論がそれと気付かぬ時間をかけてある種の人間達を戦線に投入し、エリートの消耗を減らすことにした。
各国政府にとって人的に不用と判断された者たち...つまり、あらゆる種類の犯罪者であった。
そして、日本人深井零もその一人。彼はその特殊な個性からフェアリィ空軍-フェアリィ基地戦術戦闘航空軍団-特殊戦第五飛行戦隊に配属され、そこで戦術偵察機FFR31-MRスーパーシルフ(シルフィードをその任務の特殊性に合わせ改良パワーアップした機体で、特殊戦には13機が稼動中)のパイロットをしていた。
特殊戦...それは、戦場におけるありとあらゆる情報を何にもまして最優先で持ち帰る、そう、必要であれば味方機を撃墜してでも(正当な理由があれば特殊戦にはそれが許されている)帰還する。最強の機体であるにもかかわらず、敵に当らず基地に戻って行く事から通称ブーメラン戦隊と呼ばれ、その任務の特殊性に加味して、その戦隊員達の個性が更に味方の他の部隊から孤立を際立たせている。
ある任務の最中で深井零中尉とフライトオフィサ(後席に座り、情報解析などを担当)のバーガディシュ少尉はジャムの制空権と思われる特殊な空間に囚われてしまう。
そこはジャムが用意した非現実的空間なのか、撃破された基地TAB-14が存在し、戦死した隊員たちがいた。負傷した零はTAB-14に収容されるがそこで出される食事は消化できずに戻してしまう。バーガディシュ少尉は重症で別室で治療されているというが...次の食事は零は食べる事ができた。チキン・ブロス。
ここがジャムが用意した舞台なのだと看破した零はなんとか乗機「雪風」と共に脱出するが、ジャムに追撃され被弾する。その時、次期特殊戦機に採用される無人機FRX-99をブーメラン戦隊の隊長ブッカー少佐の命令で有人機に改造されたFRX-00がブッカー少佐とパイロットを乗せ、試験飛行を行っていた。
被弾した雪風は近距離にいるFRX-00に自己の全機能を転送すると、零を自動射出で機外に放出し、新しい機体FRX-00で旧機体を射撃、破壊した。そして、乗員の安全を無視した超高機動戦闘で追撃してきたジャム戦闘機を破壊すると雪風は意識の無くなったブッカー少佐とパイロットを乗せ、超音速で基地に帰還、作戦は100%完了したと基地コンピューターに作戦報告をし、ハンガーへと収納されていった...
ここまでが前作「戦闘妖精・雪風」のおおまかな話で、この直後から「グッドラック 戦闘妖精・雪風」が始まる。
瀕死で回収された零は、一命を取り留めたが植物状態に陥っていた。ブッカー少佐は頚椎脱臼になったがなんとか任務に復帰し、零を目覚めさせる努力をする。
やがて、無人で偵察任務に出ていた雪風が通常では考えられない行動に出る。味方機を援護し、そのすぐ後TAB-15へ攻撃を開始したのだ。その時、零も反応を示す。
そのことが切っ掛けで植物状態を脱した零の口からは衝撃の事実がもたらされ、それが実際の脅威として特殊戦にも忍び寄ってくる。ジャムの人間型兵器。ブーメラン戦隊に配属された13番機のパイロットがそうであった。零とブッカー少佐は13番機を撃墜した。
零は自信を無くし、確かな感覚が欲しいと友人でもあるブッカー少佐に訴える。少佐は退役して地球に行くことを勧め、零もそれに従い地球へと超空間通路を抜け、国連機で戻る。オーストラリアの空港で零を出迎えたのは世界的なジャーナリストでブッカー少佐の友人でもあり、零も顔だけは知っているリン・ジャクスンだった。
彼女の案内でホテルに着き、情報端末で地球はジャムをFAFをどう思っているのか零は調べた。そこへ日本からのエージェントが来て、パイロットにスカウトしたい。嫌なら逮捕連行するという危機的状況に陥る。そこでFAFから助けが入り、志願隊員としてフェアリィに戻ることにした。
零は今回の短い休日の中で、自分は何者なのかという問いにリン・ジャクスンから明確かつ単純な答えを掴んでいた。フェアリィ星人。そして地球にはほんの僅かしか地球人と呼べる存在がないこと。晴々とした気分でブーメラン戦隊に復帰した零は新着の軍医エディス・フォス大尉に付きまとわれることになり、自己の再確認と変容を認めさせられる羽目になる。
雪風と自分との関係の変容、自己と他の存在の認識とを強く意識しながらフェアリィの空を飛ぶ零。そこへ空席になっていたフライトオフィサーに桂城彰少尉が着任する。
以前の自分とそっくりな人間だと聞いていた零は、いわくのあるその少尉を見ながらなるほど、と自己を革めて再認識することになる。
訓練を兼ねた偵察任務に出撃した雪風だが、ブーメラン戦隊の予想より早くジャムと接触し、ついにコンタクトすることに成功した。
ジャムは零と雪風にとんでもない要求をしてくる。零はそれを...
そして、零は雪風と共に激戦区へと飛び立って行った。
このグッドラックに関して、アチコチに見所があるが、私が強く推薦するのは第2章「戦士の休暇」の最後である。
リン・ジャクスンの笑顔と、その台詞。そして零の別れの台詞である。
「また会おう、地球人。グッドラック」「あなたも、深井中尉。フェアリィ星人」
この一場面にこそこの作品の大部分が集約している気がしてならない。
もう一箇所あるが、それは読んでのお楽しみ ^^; だけど、やはり「goodluck」というメッセージから続く一連の作品後半の大部分がそうであると...
今回の作品にしてもそうだが、最近の神林作品に見られる特徴の一つとして、自己の認識と他己との関係の変容の認識という、いわば成長ともとれる文章が作品中に分散している。
ある意味、敵は海賊シリーズを彷彿とさせるのは零とラテル(敵は海賊シリーズの主人公の一人)がどことなく似てきているからだろうか...
神林作品には多くのキャラクターが登場するが、零もラテルも属性が猫なのだ...そう感じるのはやはり自分が猫科的な人間だからなのだろうか...個人的には零にもラテルにも生きている環境がまったく違うとは言え、そうした部分で強い共感を感じる。
「自分こそが全て」という基本を持ち、そしてどこか人間的に欠落しているという...自分が全てだから、迎合する事も群れる事もしないし、全てを利己として行動できる。そして自己を侵そうとする存在に牙を剥く...早い話が自己中心的でコミュニケーション能力に欠落がある(苦笑)
この「グッドラック」はそうした零と戦闘機械知性である雪風とが互いを必要とし、認め、不可欠だが、必要ならば捨てる事ができる自己の一部としてコミュニケーションを確立していく話だ。
ごたくはそろそろにして、ハードカバーで\1,800-.と少々高目であるが、これは全てのコミュニケーションが欠落して一般社会に暮らしている人と、機械知性の話が好きな人にはたまらない本だと言える。
それ以外の人でも一度手に取ってみて損は無い本だと...おそらくは言える